眞鍋泰治税理士事務所

11 相続財産から控除できる債務

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11 相続財産から控除できる債務

11 相続財産から控除できる債務

2024/07/28

 横浜をはじめ、川崎、相模原、その他神奈川県下を中心に、相続、贈与に取り組む税理士の眞鍋です。英語対応をしておりますので、外国の方につきましても、お任せください。

 本日は、相続した財産の額から差し引くことのできる、葬式費用等について解説します。

1.概要

 相続税を計算するための基礎となる相続した財産の価額を求める際には、相続人が負担した葬式費用や、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額(注)から差し引くことができます。

(注) 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)がある場合には、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額)を加算した金額となります。

2.遺産総額から差し引くことができる債務等

遺産総額から差し引くことができる債務等は、次のとおり、葬式費用と、債務です。なお、相続放棄者については、葬式費用の差し引きは認められますが、債務の差し引きは認められません。

 

(1) 葬式費用

 葬式費用は、親族間で行った葬式であれば、相続税を計算するときの遺産総額から差し引くことができます(故人が勤務していた会社が負担した場合は、会社の費用となります)。これは、後で詳しく解説します。

(2) 債務

 差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるものです。

 なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付または徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。

 ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。

3.遺産総額から差し引くことができない債務

被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。こちらも、後で詳しく解説します。

4.葬式費用

 葬式にかかった費用は、相続税の計算で相続財産から差し引くことができます。

 ただし、どのようなものでも差し引くことができるわけではありません。ここでは、差し引きの対象になるもの・ならないものを詳しくご紹介します。

(1) 差し引きできるもの

 相続税基本通達では、葬式費用として差し引きできる費用を次のとおり定めています。

   ①葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい

    若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、

    その両者の費用)

   ②葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当

    程度と認められるものに要した費用

   ③(1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと

    認められるもの

   ④ 死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用

 これらを、具体的にみてみると、次のようなものが該当することとなります。ただし、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用に限られるため、極端に高額な場合は差し引きが認められないこともあります。

  ・通夜、告別式のために葬儀会社に支払った費用(祭壇設営費や葬祭場の使用料、棺・骨壺

   などの費用、霊柩車やマイクロバスの費用など)

  ・通夜、告別式に係る飲食費用(通夜振る舞いや精進落としなど、会葬者に料理や飲料を

   出してもてなすための費用、なお、遠方に住んでいる親族の交通費や宿泊費も含める

   ことができる場合があります)

  ・葬儀を手伝ってもらった人などへの心付け(霊柩車の運転手への心付けも含みます)

  ・寺、神社、教会などへ支払ったお布施、戒名料、読経料など(僧侶など宗教者に交通費

   として渡す「お車代」、食事を辞退されたときに渡す「御膳料」も含まれます)

  ・通夜や告別式当日に参列者に渡す会葬御礼費用(香典返しの代わりに会葬御礼を手渡す

   場合は、その費用は香典返しとみなされ、相続財産から差し引くことはできません)

  ・火葬、埋葬、納骨にかかった費用(納骨にかかった費用として差し引きできるのは、

   墓石の開閉など納骨そのものにかかった費用に限られます。墓石の彫刻料や、納骨式を

  •    執り行う場合のお布施や食事代などは差し引くことができません)

  ・遺体の捜索、遺体や遺骨の運搬にかかった費用

  ・死亡診断書の発行費用

(2)差し引きできないもの

 また、同じく、相続税基本通達では、葬式費用として差し引きできない費用を次のとおり定めています。

  ① 香典返戻費用

  ② 墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料()

  ③ 法会に要する費用

  ④ 医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

 このうちの、②については、位牌も含まれます。なお、これらは相続税の非課税財産とされています。また、③については、初七日、四十九日、一周忌などの法要が該当します。これらは、故人の供養のために行われるものであり、葬式ではないため、差し引きはできません。

 ただし、個別具体的に判断する必要があります。例えば、③については、初七日法要を告別式と同じ日に行って(繰上げ初七日)、葬儀会社からの請求で内訳が区分されていない場合には、葬式費用に含めることができる場合もあります。また、④についても、実務では個々の状況に応じて葬式費用に含めることができる場合もあります。

5.債務や葬式費用を遺産総額から差し引くことができる人

 次にあてはまる人が負担した葬儀費用は、相続税の申告で控除することができません。

   ・制限納税義務者(国外に居住しているなどの理由で国内の財産のみに相続税が課税される人)

   ・相続人・包括受遺者以外の人(特定受遺者(遺言で特定の財産を与えられた人)など)

 詳しく見て行くと、債務などを差し引くことのできる人は、次の1または2に掲げる人で、その債務などを負担することになる相続人や包括受遺者(注)(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含みます。)です。

 1 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

 2 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がない人で、次のいずれかに当てはまる人

  イ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人

  ロ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人

   (被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

  ハ 日本国籍を有していない人(被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住

   外国人である場合を除きます。)

(注) 包括受遺者とは、遺言により遺産の全部または何分のいくつというように遺産の全体に対する割合で財産を与えられた人のことをいいます。

 なお、相続人や包括受遺者であっても、上記の1または2に該当しない人は、遺産総額から控除できる債務の範囲が限られ、葬式費用も控除することはできません。

 また、平成27年7月1日以降に「国外転出時課税の納税猶予の特例(※)」の適用を受けていたときは、上記と取扱いが異なる場合があります。

6.葬式費用にかかる注意

 葬儀代は相続人(喪主)、あるいは遺族が支払うのが一般的です。また、遺産から葬儀代を支払うことも可能です。ただし、金額や対応によっては、相続財産の処分として捉えられる可能性があり、相続放棄できなくなる場合もあります。

 すなわち、遺産には借金も含まれるため、相続を放棄したほうが相続人にとってプラスになる場合もあります。ただし、遺産を使うと「単純承認」(マイナスの財産を含む財産を相続することに意思を示さずとも承認する行為)したと認められ、相続放棄が認められないケースがあるため、注意が必要です(後見人が管理する財産から支出するケースも注意が必要です)。

 具体的には以下のような行為です。

    ・故人の預貯金を勝手に下ろし、生活費に使用した

    ・財産を故意に損壊、もしくは破棄した

    ・悪意をもって相続財産を隠匿した

 ここで、葬儀費用に使用する場合は「相続財産の処分」に該当せず、相続放棄が認められます。ただし、以下のような場合には、単純承認したと認められる可能性があるので、注意が必要です。

  ①華美、不相応な盛大な葬儀であった場合

  ②3か月の熟考期間を過ぎてしまった場合

  ③相続品の一部を壊してしまった場合

  ④四十九日や一周忌の費用を取り置きしていた場合

 ③については、相続財産を処分すると相続放棄できませんが、この場合の「処分」とは売却だけを指しているわけではありません。生前に存在していたものが相続の段階で元の状態で確認できない場合も処分にあたります。たとえば、火葬の際に副葬品として遺品を棺に入れて損壊させた場合も「相続財産を処分した」と判断されることがあります。

 ④についても、葬儀費用として認められるのは葬儀にかかる費用のみです。四十九日・一周忌といった法要にかかる費用を相続財産から出すと、単純承認したと見なされ相続放棄できません。同様に、香典返しや喪服代も葬儀費用には含まれませんし、ほかにも、以下のような費用を相続財産から支払うと単純承認となります。

    ・墓地や墓石の購入にかかる費用

    ・仏壇や仏具にかかる費用

    ・本位牌の作成費用

    ・死体の解剖にかかる費用

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